12月にぼくの新作絵本『トリゴラスの逆襲』が出ます。よろしく。
『トリゴラス』は1977年に原画を渡してから半年間、こんな絵本は出したくないという出版社の固い扉をこじ開けるような交渉が続き、翌年の夏、初版部数を大幅に減らされて出た時にはさすがに言えませんでしたが、ぼくはすぐにでも続篇を作りたかった。映画「ゴジラ」(54年)の半年後に「ゴジラの逆襲」(55年)が上映された、そんなことを絵本でもやりたかったのです。
絵本ブームのさなか、79年に「月刊絵本」のすばる書房が絵本とは別件で失敗して倒産。絵本出版が犠牲になってしまいます。混乱の中で原画やフィルムが散逸し、印刷物から縮小コピーして間に合わせた『はせがわくんきらいや』と『とんぼとりの日々』が別のすばる書房から復刊されますが、この会社もあえなく倒産します。
先日の理論社倒産で生々しく思い出しましたが、ふたつのすばる書房倒産でぼくは作家生活の崖っぷちに立たされました。『トリゴラスの逆襲』のことはいつしか忘れていました。
センダックの絵本『かいじゅうたちのいるところ』神宮輝夫・75年訳には違和感を持っていました。原文はワイルドシングだから怪獣というより野獣か怪物。他の人による66年訳では「おばけ」でした。子どものころから大好きだった怪獣はもっと巨大で恐かったよというメッセージをぼくは『トリゴラス』に込めたのでした。
しばらくの間、怪獣はぼくの作品の重要なモチーフになりました。絵本では『おさむ、ムクション』(81年)や村上康成・絵のヨット三部作(87年)、小説『見えない絵本』(89年)など。
逆襲のタイミングを逸したままだったトリゴラスがこの7月、ぼくの中に何の前触れもなく姿を現しました。32年の間、溜まりに溜まったトリゴラ・ガスがついに爆発したと言ってもいいかもしれない。
初めは『トリゴラス』の続篇なんてプレッシャー強すぎますと敬遠気味だった編集者も、ぼくがプロットを熱く語り、ダミーを作り、会って話すうちにノッてきて、そのノリで一気に描き進め、10月の初めに脱稿しました。『トリゴラス』と同じ文研出版から出るのがうれしい。ぜひ2冊続けて読んでみてください。トリゴラスの謎が、解けるか一層深まるか……どう読んでもらえるか、わくわくしながら待ってます。
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