日本絵本原画展 in England
イギリスで初めて開催された日本絵本原画展で『すいみんぶそく』の原画6点が展示されました。アートとしての現代日本の絵本の一端をイギリスの人たちに紹介。原画展の他に、日本の現代絵本の展示、講演会、ワークショップ、子ども対象の催しなどがありました。
期間:2001年
5/5(土)〜6/16(土) バーミンガム中央図書館内ギャラリー
7/9(月)〜8/18(土) ロイヤル国立劇場内ギャラリー
9/29(土)〜11/3(土) ニューキャッスル大学 ハットン・ギャラリー
原画を出展した作家●荒井良二、馬場のぼる、長新太、長谷川集平、林明子、太田大八、佐野洋子、新宮晋、谷内こうた、田島征三、きたむらさとし(イギリス在住)
原画展報告'01年5月から11月までイギリス3ヶ所で開催された初の日本絵本原画展が好評のうちに終わり、長い旅に出ていた『すいみんぶそく』の原画6点も日本に戻ってきました。 三宅興子さん正置友子さんをはじめ、実行委員の方々の熱意と働きかけによって実現したこのイベントは、絵本を窓口に今までと違った角度から日本の文化を広く紹介する画期的なものとなりました。
写真は実行委員会からいただいたものです。
左上・原画展専用の道路標識
右上・国立劇場ギャラリー。『すいみんぶそく』展示風景
左下・同ギャラリーの様子
右下・ニューキャッスル大学 ハットンギャラリー。子どものためのイベントが数多く行われました
「東洋の目で描かれた絵本の世界」 ジェーン・ドーナン(絵本評論家)
「日本絵本原画展 イン・イングランド」の日本語版パンフレットより抜粋……独創的な絵という点では、物語絵本のなかで最も印象に残るのは、長谷川集平の『すいみんぶそく』だろう。これはポストモダンの絵本であり、年齢の高い読者向けである。青の水彩ペン、のたうつような絵の具の使い方、透明な色彩、こういうものが織りなす世界で、ファインアートとコミックアートの技法がうまく溶けあっている。登場人物は抽象的なイメージのようなものとして描かれる。思春期の子どもたちが死や性に関して抱いている錯綜した不安を、長谷川はうまく形として表現している。年若いヒーローのケンタロウは、すいみんぶそくだ。ケンタロウの日常生活は、なんとかふつうに営まれている。しかし妄想の超現実のなかでは(つまり眠っているときと起きているときの中間の状態では)、ケンタロウの吐く息は樹木をゆらし、ガールフレンドを炎に包んで歩かせる。さらに吸う息で、燃えている彼女を開いた口に飲みこんでしまう。幸いにも翌日、彼女はちゃんと生きていたが、ケンタロウと同じように不眠症になっていた。これは愛についての本? それとも命は限られているということ? 結末は読者にゆだねらている。