コラム04
機材自在
機材自在17 篠笛 「喜月」唄用十本調子(D管) 機材自在18 バウロン 写真●クン・チャン
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機材自在17
篠笛 「喜月」唄用十本調子(D管) 集平
ホイッスルで長崎くんちのシャギリを吹いてみたい。シャギリにつきまとう特権的な装いを一度取っ払って音楽を裸にしてみたい。テープで確かめると、なぜかアイルランド音楽によく使われるD管かE♭管が使われているようだ。
シャギリの特徴は、ヒシギという超高音にある。このヒシギはアイリッシュではまず使われない3オクターブめの音域。ホイッスルのようなマウスピースを持つ笛では、高い音は強く吹かないと出ない。ヒシギを出すにはトランペット並みの肺活量が要求され、出てきた音は耳をつんざく。横笛なら訓練によってこのような音も押さえて出すことが可能である。そこで篠笛に興味を持つ。
なーんだ、ホイッスルと同じ構造じゃん。7穴の篠笛でも6穴の笛と同じ指使いで演奏できる。さらに調べてみると、シャギリの調子が特定できなかったのは、あの自作の笛の音程にばらつきがあるからだった。百の祭囃子があれば百の音律があるという。それが日本音楽らしい。今は唄用として平均律に近い楽器が普及している。唄用のD管でいけるみたい。
インターネットの通販で取り寄せたのがこれ。和楽器にはなんだか難しそうなモヤがかかってるけど、単なる笛だ。笛に最適の植物、竹はヨーロッパにないから、彼らは木や金属で作る。アイルランドに竹が生えてたら、もっと易しい道具になってたかもね。
「シューヘー通信」24号(2001年3月)より
機材自在18
バウロン クン・チャン
アイルランド音楽に使われる太鼓がこれ。右手と左手、右足と左足の調和を要求されるドラムとは違ってバウロンは片手で大丈夫。スティックを鉛筆のように持って団扇をあおぐように叩きます。往復で細かく叩けるので、初めての人でも騙されたように上手くリズムがとれてしまう。ナルホド、コロンブスの卵! と感心してしまいます。左手で皮をミュートしながら音色、音程、音量に変化をつけられ、太鼓何個分もの働きをします。持ち運びも便利だし、安上がりです。アイルランド人たちの逞しい知恵を垣間見る思いです。
バウロンの特殊なところは皮を張るのではなく緩めて低い音で演奏するところです(身体を緩めるという太極拳との共通点を見つけて嬉しくなってしまいます)。どうやって皮を緩めるかというと乱暴にも皮に直接水をかけるのです。それもジャバジャバと。そして待つこと数十分、低くてボヨーンとした音になったら叩き頃です。乾いて音程が高くなったらこれをまた繰り返します。やかましい楽器なので迷惑にならないように演奏することが大切です。スローエアーなどではお休みします。控えめな態度、そして我慢。シャカリキなわたしはこののんびりした太鼓に教えられています。
「シューヘー通信」25号(2001年6月)より
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