ネコッ皮事件
●情報を提供してくださったのは、長崎市のMさん(保育士)。1996年ごろに聞きました。

 数年前の初夏のこと、Mさんと数名の保育士さんが園児を連れて園外を散歩していると、一匹のふわふわした洋猫系のノラが、目の前を歩いていました。よく見ると、ネコのお腹の皮がタテにさけて、まるで上着の前を開けているかのようではありませんか!

   「ほら〜、チャックば上げんばよ〜」と、からかう先生方(も変わっていますが)をしり目に、ネコは毛皮をガバガバさせながら、威張って歩いていたそうです。で、その日は何事もなかった(?)ようにすぎたのですが……

 しばらくして、近所の小学生が「ネコが死んでる」と保育園にかけ込んで来たので、見に行ってみると、そのネコが倒れていたそうです。ところが、驚いたことに「身がない」。毛皮だけがそこに落ちていた。しかも、棒を使って広げてみると、あのジャンパーの状態で、足も尻尾もまるごときれいに脱いであった。

 「だから、ちゃんとチャックを閉めろと言ったのに」と、思ったかどうかはしりませんが、その場にいた近所の人が、地元の新聞社に連絡したり、人が集まってきたり、ちょっとした騒ぎになったそうです。これが「ネコッ皮事件」として、今もその地で語り継がれている事実です。写真はその時にMさんが撮ったものです。頭がグルグルしますねぇ。事件の結末は、近所の主婦が、そのあまりのみごとな脱ぎっぷりに惚れたのか、袋に詰めて持って帰ったところ家の人に怒られ、けっきょく捨ててしまったとか。それでいちおう騒ぎはおさまり、一件落着。

 ところで中身の方はいったいどこにいってしまったのか? そういう疑問を残したまま幾日かすぎ、またいつものように園児と散歩をしていると、おぉ、あのネコは生きていたのです。もちろん毛皮は脱いでいるからボディは肌色ですが、顔と手足の先だけ、りっぱなボアボアの毛に包まれて、相変わらず元気で、(そんな恥ずかしい状態なのに)シャナリシャナリと気取って、Mさんの目の前を横切ったそうです。

 真夏に入ろうとしていた時期でもあるし、暑かったんでしょうか。やはり九州という土地柄、毛皮で過ごすには限界があったのかもしれませんね。いやいや、ホントの話、毛の深いチャウチャウみたいな犬だと、夏は毛を刈ってやらないと、皮膚病になってしまうのがいるらしいし。

 「脱いだ毛皮をしまっておいて、また秋に着るつもりだったもかもしれない」と、ちょっと心配した方、ご安心を。寒くなる前には、ちゃあんと新しい毛皮を着ていたそうです。よかったよかった。

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