『長谷川集平・原画展』開催にあたり


はじめに

 2002年春3月、『長谷川集平・原画展』を開催できますことは大きなよろこびです。
 1976年、長谷川集平さんは『はせがわくんきらいや』で日本の絵本界に衝撃的なデビューをされました。創作えほん新人賞を受賞したその作品は、前年、長谷川さんが二十歳の大学生の時に描いたものでした。以後『とんぼとりの日々』('77年)、『トリゴラス』('78年)、『日曜日の歌』('81年)と一作ごとに絵本の世界を広げ、深める作品を描き続けてこられました。それらのどの作品も読者を深く励まし、又、楽しませるものでしたが、同時に強く驚かすものでもあったと思います。絵本とは小さな子どもたちのもので、大の大人が読むものではないと思っていた人たちに、「こんな絵本があったのか、絵本はこんなこともできるのか。」という思いを幾たび抱かせてきたことでしょう。二十数年前にその作品を手にした人と、十年前、そして今、その作品を手にする人が、同じ驚きの言葉を発するのを何度も眼にし、耳にして、あらためて長谷川さんの作品のカと、そこに込められた思いの深さを考えさせられます。「絵本のことを考えることは、人生とか世界を考えるのと同じことになってしまうかもしれません」長谷川さんの言葉が耳元にきこえてきます。
 長谷川さんの仕事は絵本にとどまらず、絵本論や小説、児童文学、映画評論や音楽評論など幅広い分野に及んでいます。とりわけ、今回の原画展で、長谷川さんと音楽との深い関わりを見ていただく機会を与えられましたことは至上のプレゼントと考えています。音楽が人を生かし、生かす力となるということはどういうことか、そのことを体感する場ともなることを願っています。原画展最終日の3月24日、午後7時半からこの会場で開催される集平さんと奥様のくみ子さんによるライブラリー・コンサート、『チェロギタ・ロック』は必見です。みなさまぜひお越しください。
 今回、『長谷川集平・原画展』が実現できました経緯につきましては、『今回の原画展について』の長谷川さんのお言葉に尺きますが、改めて、このような”光”に満ちた多彩な原画展を実現してくださった長谷川集平さんとそのスタッフの方たち、そして、その実現への強い要望を図書舘に伝え、ご協力くださった町の内外のみなさま、お一人お一人に心から感謝するものです。
 来館いただきましたみなさまには、長谷川さんの絵と音楽の世界で静かなひとときをゆっくりと過ごしてくださいますように。今回の原画展が長谷川集平さんの新たな絵本づくりへの一石となることを祈念して。

2002.3.1
能登川町立図書館


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