「シユーヘー"Light my fire '97"長崎ライブ報告」

ハズ高井良   

 この通信を手に取られる方は、絵本作家長谷川集平については当然ご存知なのでしょうが、集平さんのもう1つの顔であるロック・ユニット「シューヘー」についてはどれくらいご存知なのだろうか。私の今回の拙いライブリポートを通じて、シューヘーやその会場に集まる人々の熟気が少しでも伝われば嬉しく思います。
 今回は姫路から始まったツアーの最終日、長崎での会場は夫婦川町のライブハウス、スタジオDO!。会場に到着して見渡すと見知った顔も散見するが、新しくファンになったのであろう初めて見る顔も多い。
 まずは前座でTwo of usの登場。といってもメンバーの2人のうち、1人は集平さんである(もう一人は山口敦さん)。エレキ・ギター2本によるインスト・ロックのユニットである。ユニット名の由来になったと思われるザ・ビートルズの「Two of us」でスタート。続いてベンチャーズの曲を立て続けに披露する。リラックスした演奏に聞こえるが、普通ならドラムやベース入りで演奏される曲をギター2人だけで表現しているので、演奏者達のテンションは相当なものであろう。ラストにはアニマルズの名曲「朝日のあたる家」を大音量でぶちかまして演奏終了。8月のステージデビュー以来2度目のステージとは思えない充実ぶりで、今後の演奏活動が楽しみである。
 続いてシューヘーのステージ。よその県でのライブの様子がシューへー・ガレージのホームーページで随時報告されていたので待ちに待った長崎でのライブである。私はシューヘーのステージを見るのはイベント出演の演奏を含めれば今回で5回目になるが、最近はこの2人がステージに姿をあらわすと、それだけで場の空気が変わったような独自の存在感を感じるようになった。絵本作家の余技や趣味的活動とはわけが違う、ステージに立つものとしての風格とでも言うべきものがそなわっていると感じる。
 今回のライブは、シューヘーの間でファズに対する再発見があったらしく、エフェクター類を最小限に抑えたサウンド作りになっており、ロックファンに強くアピールするものになっていた。
 今回は事前の情報で、新曲も披露してくれるとのことだったが、印象に残ったのがその中の1曲「危険な兆候」である。リフを刻みながら印象的な言葉を吐き出すように歌う、ロックの世界では定型とも言えるスタイルの曲なのだが、楽器がギターとチェロのみなのでシューヘーにしか出せない独特の雰囲気がある。しかし、演奏は紛れもないロックのそれで、つくづくシューヘーというユニットのユニークさを実感させられた。セミナリヨでは、ジャンルを横断した幅広い音楽的知識を惜しげもなく披露してくれる集平さんだが、そのベースにはロックの熟さが脈打っているのだろう。そこいらのロックバンドより、より深い所でロックの本質を掴まえているということか。このことは、アンコールでレッド・ツェッペリンの「ノー・クォーター」をエレキ・チェロで演奏するクン・チャンにしても言えることである。ラストにはシューヘーファンにはおなじみの「映画にいこう」で観客を大きなグルーヴに巻き込んで今回のステージを締めくくった。
 最近のロックシーンでは自分達なりに掴まえたロックの本質を様々な方法論で展開するようなミュージシヤンが増えている。そういった音楽を好む若い音楽ファンにもぜひ一度は足を運んで見てもらいたくなる今回のシューヘー・ライブであった。(98/1/10付け 「長崎絵本セミナリヨ通信」)


●シューヘーとは